気になるビジネスデータ02:訪日外国客 年間3,000万人超えの光と影・オーバーツーリズムと持続可能な観光

日本政府観光局と観光庁は、2018年の訪日外国人客数が過去最高の3,119万人となり、年間旅行消費額も4.5兆円と2011年から7年連続で増加したと発表した。2011年度は、訪日外国人客数が621万人、年間旅行消費額は8135億円だった。7年間でそれぞれ約5倍に伸びたことになる。

しかし、急激な伸びに対する歪みと言うべき事象も顕在化している。いわゆる オーバーツーリズムの問題だ。オーバーツーリズムとは 「多数の観光客の来訪や急増による地域への悪影響」のことで、「持続的な観光」に対する脅威として各国で問題となっている。わが国でも訪日外国人客が急激に増加している観光地では、ほぼ例外なく起こっていると言って過言ではなく、ここへ来て急速にクローズアップされている。

国土交通省国土交通政策研究所はそのような実態を踏まえ、このほど、「持続可能な観光政策のあり方に関する調査研究」を発表した。それによれば、混雑やマナー、観光危機管理、宿泊施設の不足等が調査対象となった自治体の約4割以上で、観光開発等による自然、文化、景観・町並みへの影響については2割程度で、課題として認識されているという。また現地調査の結果、①持続可能な観光に向けた総合的なマネジメント、②宿泊施設や開発への対応、③観光危機管理が重点テーマとなっているとしている。

いわゆる越境ECの普及などもあり爆買いブームは一時ほどではなくなり、代わってリピーター客などを中心とした「コト消費」の傾向も顕著になりつつある。今後インバウンドがさらに成長するには、訪日外国人客を巡る状況が「量から質への転換」に向けたものへと改善し、地域住民にとっても受け入れ可能なものとなることが不可欠だ。その意味からも本調査研究は、インバウンドを巡る方向性を知り、いち早く対策を講じようとするビジネスパースンにとっても一読の価値があるものと言えよう。
国土交通省国土交通政策研究所「持続可能な観光政策のあり方に関する調査研究」