PMIが注目される背景と、その重要性

PMIとは

PMI(Post Merger Integration:ポスト・マージャー・インテグレーション)とは、企業の合併・買収(以下M&A)による企業や事業の取得取引の成立後に行われる、統合のプロセスを指します。
企業の構造改革・事業改革のスピードアップが求められる中、件数・金額ともに増加し、一般的な経営手法となりつつあるM&A。その成否の鍵はPMIの巧拙が握ると言っても過言ではありません。そこで今回はPMIが注目される背景と重要性について、紹介します。

PMIが注目される背景(1):M&Aの増加と一般化

かつてはわが国でも事業構造の転換の多くは自前の資源を中心に行われ、M&Aは特殊な手法と考えられてきました。しかし経済のグローバル化の進展とともに業の変革にもスピードが求められる様になるにつれ、M&Aはその課題達成の有力なツールとして注目される様になりました。その結果、日本企業が関わるM&Aは、バブル崩壊やリーマンショック等の影響を受けながらも件数・金額ともに徐々に増加し、2018年にはついに件数・金額とも過去最高になりました。M&Aが経営上の特別な打ち手ではなく、一般的な企業変革の手段となりつつあることを物語る出来事の一つと言えるでしょう。

M&Aは国内企業が海外企業を買収・合併の対象とするIN-OUT、海外企業が国内企業を買収・合併の対象とするOUT-IN、国内企業が国内企業を買収・合併の対象とするIN-INの3つに分かれます。 件数の内訳と推移を見ると、その大きな部分がIN-INであることが分かり、その多くは後継者不足による中小企業の事業承継を目的としたものといわれます。一方、金額についてはその大きな部分をIN-OUTが占めていて、昨年新聞・テレビ等で大きく報道されるた医薬品業界、通信業界で行われた数兆円規模のものを始め、わが国のリーディングカンパニーがグローバルな戦略を見据えて海外企業に対し行う、大型のM&Aが金額を大きく押し上げていると言われています。
わが国におけるM&Aの件数・金額の推移について:株式会社レコフ「1985年以降のマーケット別M&A件数の推移」「1985年以降のマーケット別M&A金額の推移」(同社ホームページ「グラフで見るM&A動向」内グラフ)による。

PMIが注目される背景(2):PMIはM&A成否の鍵

移植された臓器が移植を受けた患者の体内で順調に機能し、患者に健康をもたらしてこそ移植手術は成功と言えるのと同様に、買収された企業(或いは事業)と買収した企業との間で事業上のシナジー効果が発揮され、企業価値が向上してこそはじめて企業変革を目的としたM&Aも成功したと言えるでしょう。また移植手術の失敗が最悪の場合、患者に死をもたらすのと同様に、M&Aの失敗も財務的な面からだけではなく、中長期的な成長機会の喪失や従業員の社員のモラルダウン、優秀な人材の流出等による企業価値の低下をもたらし、最悪の場合は企業の存立さえ揺るがしかねないという危険な側面を併せ持っています。M&Aによる事業上のシナジー効果の発揮に向けた企業・事業の統合プロセスであるPMIが、重視されるゆえんです。