2018/01/30講演会 開催レポート

テーマ
「『危機感のない日本』の危機 ~世界の常識は日本の非常識~」
講 師
大石 久和(おおいし ひさかず)氏
公益社団法人土木学会会長/一般社団法人全日本建設技術協会会長/
京都大学大学院経営管理研究部特命教授
日 時
2018年1月30日(火)15:00~17:00

今回は、国土交通省において長年にわたり国土整備に取り組んでこられました、 大石久和氏をお招きして「『危機感のない日本』の危機~世界の常識は日本の非常識~」と題し、わが国の経済・財政・インフラについて、いかにわが国の常識が世界の常識から乖離しているか、なぜわが国だけが経済成長していないのか、各国のインフラ整備に関しての考え方や現状などについて、各種統計データや事例などを交え、わが国の現実と多くの問題提起をいただきました。

【大石講師】

講演の主な内容は以下のとおりです

  • この20年間の日本の経済・財政を総括すると、財政再建至上主義と小さな政府を志向する新自由主義経済学では経済は成長できず、デフレに沈んだままでは国民は豊かにならない。まさに、「経済成長なくして財政再建なし」といえる。
  • 日本は経済で世界に存在感を示してきた国である。世界GDPに占める比率は、1995年は約20%であったが現在は約6%まで低下しており、各国は日本を経済力の低下した国と見ている。一方、中国は1995年当時の同比率は約2%で、日本に日中友好と技術移転を求めていたが、現在では約15%まで成長しており、先日の共産党大会ではもう日本が眼中にない様子であった。
  • 日本はGDPが低下するだけであればまだしも、残念ながら国民が貧困化していった。1995年と2015年を比較すると世帯平均収入は560万円から446万円へと約120万円低下している(厚生労働省データ)。また、収入300万円以下の世帯が世帯数の約40%になってしまっている。デフレ経済が続いた結果、物価の下落率以上に給料が低下してしまい、こんなにも多くの国民が貧しくなってしまった。
  • わが国の税収を増やすために大事なことは消費税率をあげることではなく、国内のモノやサービスが活発に回ることであり、それによって経済が成長し税収を増やすような政策を打たなければならない。わが国の財政問題は「総税収」不足問題であるからである。
  • 諸外国とわが国とでは、国債・借入金残高の定義に違いがある。諸外国は純債務(貸借対照表の負債金額から関連する事業等で取得した固定資産・金融資産などを控除した金額)=政府債務だが、日本は全債務(貸借対照表の負債に計上されている全ての金額)を政府債務としている。外国と同じ基準で比較すると、全負債1,224兆円のうち約560兆円は純債務に該当しない。内訳は①建設国債:275兆円(道路・河川・港湾などが将来への資産として存在)②外国為替資金証券:190兆円(政府は見合いのドルを保有)③財政投資特別会計国債:95兆円(見合いのJR資産など)であり、外国と比較するのであれば政府債務は同じ基準でその分の残高を減らしたうえで比較をおこなうべきである。
  • イギリスでは、キャメロン前首相は、「インフラは現代生活をあらゆる場面で支える、経済戦略の重要な要素であり後回しにできない」と発言しており、メイ首相は、「競争力を高めるため『産業戦略』を提案し、その提案の一つにデジタル、エネルギー、交通、洪水対策のインフラの性能水準を向上させるとともに、この中央政府のインフラへの投資を地方の成長へつなげる必要がある」と言及している。ドイツでは、メルケル首相の連立政権3党合意文書(2013年1月)で、「モビリティーは個人の自由、社会参加および豊かさと経済成長のための重要な前提となるものである。そのために必要な基盤が質の高い交通インフラである」として、国家レベルの交通計画をもって推進している。しかし、日本では、まったくこのような議論がされるようなことはない。
  • 日本では、インフラ整備は公共事業との見方が一般的で、そのためフローとしてしか見ていない。ストックとしてみるべきである。インフラストラクチャー(社会基盤)としての概念を欠いている。国会議員も、インフラ整備の重要性を理解していても、現在の小選挙区制度の中では、選挙での当選を考えるとマイナスの影響が大きく、なかなか公約にあげるのは難しい状況である。
  • 東京に大地震が来ないかのように、人も会社も東京首都圏に一極集中している。リスクマネジメントの観点から、地方転出への優遇策や東京立地への負担策などを早急におこなわなければならない。

【講演会風景】

講演の後、活発な質疑応答が行われました。

参加者の感想(一部抜粋)

  • とても刺激的なプレゼンテーションでした。新聞などマスコミ情報だけを見るのではなく、様々な方の声にも耳を傾けることの大切さを知りました。
  • インフラの維持管理に関わっていますが、経済成長に貢献しているというプライドが持てました。ぜひ社内で共有したいと思います。
  • 非常にショッキングな内容でした。自分自身の無知無関心を反省するばかりです。私自身は人材育成に携わっておりますが「従業員がきちんとミッションを理解できているか?」という問いかけに、ハッとさせられました。個人主義、ダイバーシティーが進む中、いかに「働く意欲」を高めていくか、考え続けていきたいと思います。
  • 危機感を持つこと、データを読み切る力を持つことが必要であるという点と、日本人は認識が欠損しているという点が参考になった。
  • 外国との比較を通して、種々の情報・データに真実が隠されていることが理解できた。

以上