【NECプラットフォームズ】お客様に選ばれ続ける工場を目指して

NECプラットフォームズ 掛川事業所
執行役員 渡邉祐子 氏

当社はNECグループのIT、ネットワークの開発・生産会社を統合し、2014年7月にNECプラットフォームズとして発足しました。当事業所では、ホームゲートウェイ等の主力製品を開発・生産し、ITとネットワーク力で社会価値を創造する事業活動を行っています。生産拠点は日本、タイ、中華圏の三極にあり、世界100カ国以上のお客様に製品を届けています。
当事業所の従業員は約1,000名、創業は1970年で間もなく50周年を迎えます。開発・生産品目は、テレビに始まり、携帯電話、ホームゲートウェイ事業、ネットワーク製品、組込・車載等と大きく変遷してきました。
ホームゲートウェイとは、各家庭でインターネットサービスの利用時に通信事業者と一般家庭をつなぐ中継機器を指します。ホームゲートウェイ事業は(1)量販店販売(BtoC)、(2)事業者へのOEM(相手先ブランドによる生産)供給(BtoB)、(3)直接機器レンタルする(BtoBtoC)の3方式で提供しています。製造、配送、管理、顧客サポート、回収、再生、廃棄のほか、機器レンタルをビジネスモデル化していることが当事業所の最大の特徴です。
困りごとを解決する視点を工場から事業者、顧客、地球環境まで広げることで、課題を発見・克服し、解決力を高めています。

大量在庫の危機から一念発起、トヨタ生産方式を徹底的に学ぶ

1990年代は量販店販売が大勢を占め、売り切りのISDN方式が主流でした。当社は長らくターミナルアダプターの販売でトップシェアでしたが、2000年代に入りADSL方式への移行が始まると、事業者側機器とのマッチングが必要となり、専用機器のレンタルが急伸。その変化を掴めず、量販店用の在庫を抱え、会社存亡の危機にまで陥りました。原因は「言われたものを言われただけ作ればいい」という意識でした。
一念発起し、工場自らが市場や顧客を理解できるよう意識改革を行い、市場に連動する仕組みや顧客の変化に素早く対応できる取り組みを始めました。
2000年以前の当事業所は、工程間に部品や仕掛品があふれ、どこで仕事をしているのかわからない状態であり、実需に連動しない非同期生産のため、工程が分断されリードタイムも保証できていませんでした。そこでトヨタ生産方式を徹底的に学び、「一流運動」を展開しました。「売れなければ止まるものづくり」を目標に、トヨタ生産方式の本質は「流れ」であるとの理解のもと、一個流し、一回で流す、一か所で流す、「一(いち)」にこだわり、一流の仕組み・仕掛けで一流のものづくりを目指したのです。
まず構内のフロアレイアウトを改善し、流れをつくる基盤整備に着手。入口から出口まで、各工程を短く並べ替え、統合できない部分は15分、30分ごとに工程間をつないだ結果、異常や無駄が顕在化しました。そして顧客、工場、サプライヤーと同期させる基準クロックとして、定時・定ルートで全国の物流網をグループ全体で整備し、自律するシステムを推進し、出荷に合わせた生産を明確にしました。
次にラインの無駄を省き、工程や作業者のリズミカルな動きをつくり、標準作業の精度を上げ、生産性、品質、仕掛り、リードタイムを改善しました。
しかし、ものづくりに自信がある人ほど変化への抵抗が強かったことも事実です。そこでトップの想いを伝えるメッセージ、現場主義の徹底、生産ライン同士の交流、成功体験の共有など、試行錯誤の結果、真の目的が共有され、全員参加の活動になり、抵抗者ほど強力な推進者へと変わりました。
一流運動により、サプライチェーン全体の安定したリードタイムが実現した結果、棚卸効率は3倍、フロア効率も5倍まで改善。また流れに同期すること、全員が参加する意識改革など十分な成果が得られました。

通信事業者の困りごと解決へ

ISDN からADSLに変化する中、通信事業者にも新規プレイヤーが登場しました。当初ADSLはOEM供給し、事業者のレンタル方式でしたが、新規事業者には煩雑な業務が業容拡大の足かせでした。事業者の情報をつかみ、得意領域を分担することでwin-winの関係を築けないかと提案、レンタル業務を一括して請け負うことを決意します。
配送、回収、再生、解体・廃棄という工程をライン化し、射出成形やスクリーン印刷などの機能も取り込みました。レンタル事業は、市場の変動を直接受けるため、最低限の在庫で製造ライン、サプライヤーに連動させない仕組みづくりに着手しました。
事業者の異なる意匠やデザインのバリエーション増大には、マスカスタマイゼーションで対応し、基本機能は共通化、変動部分は、打ち抜き、スクリーン印刷は安価な自働機を開発することでリードタイム、変動対応を強くするとともに工場の付加価値、技術領域の拡大にも役立て、レンタル事業をビジネスモデル化しました。

顧客の困りごとは全員で共有

事業所のコールセンターで受けた生の声は、事業所内で共有し、顧客の潜在ニーズの深堀り、提案材料としました。改善事例を2つ紹介します。
 1つめは、配送締め時間延長による事業者へのサービスの向上です。仕分けを内製化することで、配送業者の負荷が軽減され、当社のサービスも向上しました。
2つめは、他社製品も含めた一括配送による顧客サービスの向上です。他社製品と組み合わせキッティングし、セット配送することで、顧客にとっての煩わしい複数回受け取りや課金タイミングのトラブルが減少、さらに通信事業者の配送料削減にもつながりました。
ホームゲートウェイ事業の機器レンタルのスキームを、情報端末をサポートする総合的なインフラと捉えることで、広く応用でき「ことづくり」面でも事業拡大に寄与しています。

次は地球環境の困りごと解決へ

レンタル事業では、顧客が解約した機器を回収し、資源として再利用する3 R(リデュース・リユース・リサイクル)をスキームに組み込んだ「資源循環型生産方式」を確立しています。個人情報を消去、清掃し、品質保証できる範囲で再利用しています。企画段階から3Rを意識し材料を選定、共通仕様とし、全体の90%をリユース可能としています。
当事業所には、1日数千台の機器が戻ってきます。スムーズに解約に進められるよう、機器情報検索システムを独自開発し、誤登録ゼロを実現しています。

縦横コミュニケーションが困りごと解決を牽引

困りごとの解決から事業も成長しましたが、その力を高めたのはもう一つの取り組みでした。工場マネジメントは、中期経営計画を起点とした方針展開によるPDCAが基本です。活動目標は、年度開始前に半期ごとの施策に落とし込み、週次のPDCAでフォローアップ、全拠点共通の「千本桜」として見える化しています。
実務層から経営層という縦軸、営業・開発・生産・品質・スタッフという横軸からなる縦横コミュニケーションも活発で、課題の深掘りや新たな気づきを得ることで、次の改善につなげています。月例の活動報告会後のワイガヤでは、現場の人たちも気兼ねなく、直接社長に提案し、改善の加速を実感しています。
2004年から始まったNECグループの「NEPS自主研」は、毎月グループの工場に集い、2泊3日で改善を行う活動で、現在350名の次世代を担う工場管理者・改善リーダーを輩出しています。
また、当社グループは「ものづくりの日」を毎年7月に開催し、技能競技やロボット、IoTのアイデア大賞の発表などを行い、将来のものづくりのあり方を考える日としています。

活動の成果と今後の取り組み

困りごとを意識的に広げ、高めることで、成長し続けながら変わっていく力が、活動前に比べ高まりました。つくり過ぎの苦い経験から始まった活動ですが、ホームゲートウェイ事業は着実に伸長しています。また、レンタル事業、資源循環方式は2014年経済産業省産業技術環境局長賞を受賞し、毎年200グループを超える企業が工場見学に訪れています。
さらに、あらゆる業務プロセス・ITを標準化し、開発・生産のアセットを自由に組み合わせて、競争力と変動対応力を強化したグローバルOneFactoryをきわめたいと考えています。<終>