【ダイキン工業】世界No.1を目指すモノづくり力を支える人材育成 ~技能伝承制度の確立~

ダイキン工業
堺・滋賀・淀川・鹿島製作所 ※4製作所共同応募
空調生産本部堺製造部 役員待遇製造部長
澤 静治 氏

会社概要と工場概要

ダイキン工業は、1924年に合資会社大阪金属工業所としてスタートし、はじめは飛行機のエンジンを冷却するラジエータチューブの製造を行っていました。その後、日本初となるフロン式冷凍機や業務用空調機を開発、総合空調メーカーとして空調業界を牽引してきました。

当社の主な事業内容は、空調事業、化学事業、油機・特機・電子システム事業です。2018年度の売上高は、空調・冷凍機事業が2兆2,222億円と全体の9割を占めており、空調機と冷媒の両方を手掛ける世界で唯一の企業です。

当社の空調生産拠点は、中国、アジア・オセアニア、欧州、米国など世界に80拠点以上、また商品開発も10拠点以上あります。当社では1998年から団塊世代の退職に備えた技能伝承制度の確立を目指し、人材育成に取り組んできました。

今回は、堺製作所、滋賀製作所、淀川製作所、鹿島製作所の4製作所が主体となって行ってきた技能伝承の仕組みの構築と、その運営についてご紹介します。

活動を進めた背景としくみ

2000年代、団塊世代が一斉退職する2007年には、現場固有の技術・技能の継承が困難となり企業活動が停滞する恐れがあるとして、いわゆる「2007年問題」が取り上げられました。当社においても、技能力の枯渇、仕事の空洞化、競争力の低下などに危機感を持ち、意欲と技能を兼ね備えた有用な人材を活用すべきとの考えから、1998年には技能伝承の制度化に着手しました。そして2001年には、メーカーとして重要な汎用加工技能の次世代への継承、モノづくりの基盤となる高度熟練技能者の継続的な育成、技能者の意欲の喚起、技能のレベルアップなどを目的とした「卓越技能伝承制度」を確立しました。

これは取りも直さず、創業以来、当社に脈々と流れてきた理念「人を基軸におく経営」に通ずるものでした。制度のコンセプトは
技能者に「光り」があたる制度づくり(称号・資格取得)
技能者が生き生き働ける製造現場づくり(夢・意欲・評価)
将来は協力会社およびグループ会社へも展開
とし、技能者にとっても魅力ある企業づくりへ寄与するといった狙いがありました。
そこで、活動を円滑に進めるしくみを6つ用意しました。

(1)技能伝承制度
「技能伝承委員会」を設立し、任期1年の委員を毎年4月に任命します。委員会の役割は、毎月1度、技能伝承委員会を開催し、戦略技能職種およびマイスター、トレーナーの認定とその育成状況の管理および活用策の立案と実施などです。

(2)戦略技能
当社は競合他社との競争に勝ち残るため、製品開発や生産、品質保証の面で枯渇させることができない技能10職種(ろう付け、アーク溶接、普通旋盤、板金加工、金属塗装、仕上げ加工、金型製作、フライス加工、機械保全、化学プラントオペレーション)を、重点技能と位置づけ伝承を進めています。これらは年に1度、各部門において「戦略技能評価表」に基づき評価・審査されます。また国内だけでなく、海外拠点でも同様の評価を実施しています。

(3)技能者育成の体系
技能者からレベルアップすることでマイスターに、その候補者をトレーナーに認定し、国内外で技能者の育成にあたる仕組みを整えています。

(4)マイスター制度
マイスターとは戦略技能職種において優れた固有技能を持つ「卓越技能者」の中から選抜され認定された者、また卓越技能者とは要求される固有技能の深いレベルを保有するとともに周辺技能についても高度に熟練したレベルを持っている者のことを指します。マイスターの役割は、継承者への卓越技能の伝承、技能レベルの向上活動などです。

(5)トレーナー制度
技能をレベルアップすることと、拠点の自立を加速することを育成の目的として、スキルレベルにより3区分(グローバルトレーナー、地域トレーナー、拠点トレーナー)に分けています。

(6)グローバル技能伝承委員会
技能伝承委員会の活動により自立化が進んだため、「技能のグローバル標準化」が求められました。世界同一品質の実現に向け、課題を共有し解決することで、F20(2020年戦略経営計画)に向けた技能向上を加速させるため、2014年にグローバル技能伝承委員会が発足しています。

活動の実施内容と成果

国内4製作所は技能伝承制度の確立を目的とし、(1)技能者育成、(2)品質向上活動に取り組みました。

(1)技能者育成
育成環境(道場)を整備し、標準化しました。国内に限らず世界のどこで教育しても、同じ環境と基準で認定されたトレーナーにより、教育できる環境にしました。これは海外拠点の生産拡大や、新興国、ボリュームゾーンなどで急加速するグローバル拡大への対応に向けて、拠点および地域の技能レベル向上を狙う指導者を育成するためです。第1ステップから第3ステップのステップごとに評価し、弱点を明確にして研修を進め、最終ステップ終了後に評価点数を基に認定レベルを決定します。

この成果として、2001年に初のマイスター(ろう付け)が誕生しました。2019年7月現在、32名のマイスターと37名のトレーナーが、それぞれ現役で活躍しています。(累計の育成数としては、マイスターが42名、トレーナーが45名)

当社では世界中の拠点・工場から技術者が集まり、日々の製造現場で培った技能を競い合う「技能オリンピック」を開催しています。2019年は2月20~25日の期間中、ダイキンアレス青谷(鳥取県)で技能10職種の競技を行いました。技能オリンピックは、2004年から、国内外の技能差を解消し、世界同一品質を目指す一環として、2年に1回開催しています。

(2)品質向上活動
当社の技能者は海外展開が急速に進む中、2002年にフィリピン工場で、ろう付けの指導を行ったことを皮切りに、海外の新規工場の立ち上げ時に技能指導を行っています。これによって、ろう付けとアーク溶接の不良がともに低減しています。現場では、マイスターとトレーナー、現地の一般技能者が一体となり、原理原則に基づいた設備や機種の溶接良品条件を確立しています。

そのほか、ろう付け技能訓練支援システムの技能訓練を標準化しました。原理原則を理解した後であれば、研修生だけでも動作の改善が可能になっています。

今後の方向性

当社はグローバル展開を加速させる中、メーカーの生命線であるモノづくり力を支える技能者の育成に積極的に取り組むことにより、グローバルに高品質な製品を届けることを使命としています。「 モノづくりは人づくり人づくりは自分づくり」をモットーにこれからもたゆまぬ努力を続けてまいります。(終)