本州四国連絡高速道路(株)の防災・減災に関する最近の取り組み

本州四国連絡高速道路株式会社
東京事務所 技術調整課 課長
大谷 康史 氏

本州四国連絡高速道路の概要

本州四国連絡高速道路株式会社は、本州と四国を連絡する3つのルート、「神戸淡路鳴門自動車道」「瀬戸中央自動車道」「西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)」を維持管理しています。神戸淡路鳴門自動車道は全長89km、1998年4月に開通、事業費は1兆4,700億円。瀬戸中央自動車道は全長37.3km、開通は1988年4月、事業費6,700億円ですが、鉄道分5,000億円を含めると1兆1,700億円。西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)の当社管理分は46.6km(生口島道路と大島道路は国の直轄事業)、1999年5月に開通、事業費は7,300億円です。

当社の特徴は、長大橋17橋を管理していることです。神戸淡路鳴門自動車道には、神戸と淡路島をつなぐ世界一の長大吊橋(※1)「明石海峡大橋」(橋長3,911m)と淡路島と四国をつなぐ「大鳴門橋」があります。最近のトピックとして、神戸淡路鳴門自動車道で(仮称)淡路ハイウェイオアシススマートインターチェンジ(SIC)を計画しています。これは、淡路ICから淡路サービスエリア(SA)、淡路ハイウェイオアシスに立ち寄りができないことから、隣接する県道より直接立ち入ることが可能な淡路ハイウェイオアシスSICの設置を兵庫県が検討していたもので、国交省が「民間施設スマートインターチェンジ制度」を設けたことを受け、2019年3月、国からの事業許可を受け、現在工事を進めています。(※1)支間長世界一

瀬戸中央自動車道の6橋の長大橋を総称して「瀬戸大橋」と呼んでいます。南北備讃瀬戸大橋は、2017年12月に日本イコモス国内委員会の「日本の20世紀遺産20選」に選定されました。トピックとして、本州方向のみの出入りが可能だった坂出北ICを、四国方面への出入りを可能とするフルインター化事業とするため、坂出北SICの建設事業が進行しており、2024年度供用を予定しています。

瀬戸内しまなみ海道は、日本最大の斜張橋「多々羅大橋」や世界初の三連吊橋「来島海峡大橋」など全部で9橋の長大橋により本州と四国が結ばれ、新尾道大橋を除く8橋に自転車が通れる道路が設置されており、サイクリングの聖地と言われサイクリストに人気があります。

本四国道路のストック効果

本四高速道路の利用台数は、3ルートが開通した1989年には年間約3,353万台でしたが、2018年には約4,334万台(対前年度比+0.9%)と増加し、過去最高を更新しました。これは2009年3月から2011年6月に実施された「休日小型車上限1,000円」や、2014年4月に導入された「全国共通料金」の割引が後押しする形で通行台数が大幅に増加したのではないかと考えています。

四国と本州との交流がわかる「県境断面交通量推移」では、1985年6月の大鳴門橋の供用開始から5141日後の1999年1月に、1億台を突破しました。その後、2018年2月には4億台を突破しています。各ルート別の累計交通量は、大鳴門橋が最も多く、約1億9,000万台、瀬戸大橋は約1億7,000万台、多々羅大橋が約3,900万台です。県境断面交通量の増加には、3ルートの概成に加え、周辺の高速道路ネットワークの拡充が影響しています。大鳴門橋の開通直前の1985年3月時点では、日本全国の供用延長は約3,600kmであり、その中で四国はわずか約10kmでしたが、2018年には全国約11,600kmに対し、四国は約600kmと利便性が高まっています。

四国産品の東京市場でのシェアに関して、愛媛県は養殖真鯛の生産量で全国シェア1位(2017年)で、東京都中央卸売市場での愛媛県産の真鯛(養殖+天然)のシェアは34%(2017年)でした。また高知県は、みょうがの生産量で、全国5,188t(2016年)のうち91%を占め、東京都中央卸売市場での取扱量のうち89%は高知県産です。真鯛やみょうが以外にもたくさんの産品が、瀬戸大橋などを通じて輸送されています。

防災・減災に関する最近の取り組み

高速道路の通行に大きな影響を与える自然災害にはいろいろありますが、ここでは地震、強風、大雨を取り上げます。事前の備えとして、地震に対しては耐震設計と耐震補強、台風などによる強風に対しては耐風設計、大雨に対しては排水施設の設置、排水環境の維持等を行っています。また、被災時への備えとしては、関係機関との防災協定締結による連携強化、被災想定に基づく資機材の確保等を行っています。

1,000人以上の死者が出た大規模地震を1940年代以降で見ると、1940年代に非常に大きな4つの地震の発生後、空白期間が続き、1995年1月の兵庫県南部地震、2011年の東日本大震災と近年になって大規模地震が起きています。地震に対して、本州四国連絡橋の海峡部橋梁は、独自の耐震設計基準に基づいて設計されています。また一般橋についても、1971年から1996年の間、4世代の基準(道路橋示方書)によって設計・建設しています。

耐震補強の課題としては、東南海・南海地震等のプレート境界型の大規模地震の発生が予想されるなど、設計時に想定した地震力を上回る規模の大地震の発生が懸念されています。建設時は、一般橋だけではなく、長大橋においても、兵庫県南部地震のような内陸直下型の大型地震を考慮した設計ではないため、現況の耐震性能を照査し、必要に応じて耐震補強設計の結果に基づき、耐震補強を実施しています。本州四国連絡橋の耐震性能は、代替道路がないため代替路のある高速道路より機能確保が求められること、災害時には緊急輸送路として機能することが求められること等を考慮して決めています。具体的には、大規模地震時においても、落橋や倒壊が生じないようにし(安全性)、修復が可能な損傷にとどまるようにし(供用性・修復性)、地震後の点検や応急復旧により緊急車両を通行可能にしています。耐震補強に関する国の指針には、2021年度末までに少なくても今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が26%以上の地域においては耐震補強を完了させる、また2026年度末までには全国で耐震補強を完了させる、とまとめられており、当社もそれに則り耐震補強を進めています。

現在の3ルートの耐震補強の進捗状況を整理すると、神戸淡路鳴門自動車道は、明石海峡を含むIC区間、大鳴門峡を含むIC区間から鳴門ICまで耐震補強が完了しています。瀬戸中央自動車道は、櫃石島(ひついしじま)高架橋、与島高架橋などで完了しています。瀬戸内しまなみ海道は、陸上部橋梁でかなりの部分が完了し、長大橋では大島大橋が完了しています。3ルートとも震度6弱以上の地震発生確率が26%を超えるところは、2021年度を完了予定としており、2026年度までにすべて完了する予定です。

長大橋の台風などによる強風時の耐風性は、自動車の通行止めの目安は10分間平均風速で風速25m/sですが、例えば、大鳴門橋の桁の設計風速は73m/s、下津井瀬戸大橋の桁で61m/sなど、通行止めの風速よりかなり高い風速になっています。

また、被災時への備えとして、復旧を速やかに行うために、関係機関との防災協定締結による連携強化を行っており、協定に基づいた防災連携訓練等も実施しています。同時に、被災想定に基づいた応急処置に必要な敷鉄板、クレーン付きトラック等の資機材の確保や、管理施設に電力を3日間(72時間)供給できる非常用自家発電設備の設置、必要な燃料の貯蔵を行っています。

利用者の皆様への事前の情報提供として、ホームページに天気予測データの提供、通行止め予想情報を掲載しています。そのほかにもホームページには、長大橋ニューズレターなど技術情報も掲載しているので、ぜひ閲覧してください。(終)