【ダイバーシティ ケーススタディ】vol.1 子ども連れのお客様

ファミリーレストラン

「そこではなく、こちらに置いてください!」
強い口調で言われて、山中さんは驚きました。
ファミリーレストランでウエイトレスをしている山中さんは、担当のテーブルに4、5歳の男の子を連れた女性を案内しました。男の子は、「コーンスープ! コーンスープ!」と嬉しそうに注文してくれました。

どの飲食店でもそうですが、料理は注文した人の前に置くことになっています。例え小さな男の子でも、一人の立派なお客様です。それなのに、強い調子で女性が指差したのは、とても男の子には手が届きそうにない反対側の場所でした。男の子のちょっとしょんぼりした表情を見て、『虐待? 嫌がらせ? 怖いお母さんだなぁ』と思いましたが、女性の厳しい表情に、言われたとおりの場所に置いて立ち去りました。

ホントのきもち・・・

『この前、目の前にココアを置かれたとき、いきなり手を出してひっくり返して、この子、右手に火傷したのよね。まだあのレストランとは、示談交渉が終わっていないんだから、ここでは勘弁してよね。身を乗り出して手を伸ばすから、思った以上に手が伸びるのよ。あのウエイトレスさんに、ちょっと怒鳴ってしまって申し訳なかったけれど、何かあったら大変だもの。
あら、ちょっとしょんぼりしている? ココアのときのこと、思い出したのかしら? それならそれで、学びがあって良いんだけど・・・・いえいえ、まだまだ油断できないわ!』


解説

「子どもと一緒」にいることの不便さを徹底的に考えれば、「スープはどこに置いたらよろしいでしょうか?」のひと言が、かけられたのではないでしょうか?

しかし、人は、経験したことがないことは、なかなか想像できません。山中さんは、子どもが、大人の想像を超えたことを、驚くような早さで行うことを知らないようです。しかし、それで火傷をさせてしまったら、「マニュアルどおりの行動だった」、「想像していなかった」では済まされません。お客さまへの慰謝料や治療費など、レストランに大きな負担をかけることになるでしょう。
ダイバーシティ・アテンダントは、いろいろな不便さがあるお客さまのあらゆる場面を想像し、職場の人々と体験・経験・知識を共有することを目指します。