気になるビジネスデータ01:白物家電の国内出荷額が22年ぶり2,4兆円越え

少子高齢化の進展により国内市場の縮小が危惧される中、白物家電の国内出荷額は3年連続で増加。22年ぶりに2兆4,000億 円を越えたという。
白物家電」は、家事の省力化を図る家電製品や生活に密着した家電製品などに対する一般的な呼称だ。黒色基調であることが多く「黒物家電」と呼ばれた娯楽家電に対して、洗濯機・冷蔵庫など白色基調の製品が多かったことから、名付けられたものとも言われている。個性重視の波や住環境の変化を受けてパステルカラーなどを採用、カラフルになってきたこともあって生活家電・家事家電と呼ばれる事も多くなってきているという。

代表的白物家電の家庭用電気洗濯機がアメリカのHurley Machine Companyによって発売されたのは1908年、家庭用電気冷蔵庫のGEによる発売も1911年と、いずれも販売されてから100年を優に超える長寿商品だ。また日本国内の普及率も100%に近く、究極の成熟商品と言えよう。そのような白物家電だけに少子高齢化が進む中、市場拡大を図ることは容易なことではない。実際、わが国を含む先進国の電機メーカーの多くが白物家電以外の事業分野へと転身を図り、白物家電と言えば衰退事業の代名詞の様に思われていた時期もある。

昨年市場規模が拡大した理由としては、白物家電全般の循環的な買い換えや猛暑によるエアコン需要の拡大が挙げられている。しかし出荷額の推移を示したグラフ(左参照)からは2000年代初頭に底を打った後は市場規模が徐々に拡大し、直近の3年間は連続して拡大していることが分かる。
そのような市場の拡大・復活の影には、他の要因、例えば共働き世帯の増加による時短ニーズに拡大やシニア世帯の増加によるライフスタイルの多様化、健康・美容志向の広がり等があると言われている。市場の変化に対応し、例えば美味しく炊けることはもちろん、炊いたご飯のカロリーが即座に分かったり重湯部分を取り除くことで簡単に総カロリーを減らすことができたりする健康指向の炊飯器、ペットの抜け毛を初めとするアレルゲン対策として丸洗いの出来る部分を多くした掃除機、熱による髪のダメージを抑えたドライヤー等々、⾼機能だが価格も比較的⾼い家電の需要も市場の拡大に寄与しているというのだ。

白物家電の市場拡大は、成熟した市場であっても事業環境の変化や技術の進化によっては、いわゆる「残存者利益」を超えた利益を生む宝の山へと生まれ変わる可能性があることを示唆している。今後IoTとの連携等により、スマートホームの中核として更に拡大することも期待される家電市場。その中で白物家電が今後どのように変身を遂げていくのか、自社の事業戦略を考える上でも注目して行く必要があろう。