【Book Review02】AIをねじ伏せるスーパー人材「STEAM」をシリコンバレー在住の社会起業家が解説

社会の隅々まで浸透する勢いのAI。企業もデータドリブン型社会への適応を求められています。その様な変革を担う人材として注目されているのが「STEAM人材」です。

STEAM」とは「Science(科学)」「Technology(テクノロジー)」「Engineering(エンジニアリング)」「Arts(アート)」「Mathematics(数学)」の五つの頭文字を取った造語です。(著者によれば、この場合の”Arts”とは日本語で「芸術」という場合の語感よりも”liberal arts”という場合のartsに近いとのことです。)つまりSTEAM人材とは、これも近年注目を浴びている「STEM人材」に「Arts(アート)」の能力を加えた人材なのです。いま、革新的なイノベーションを生み出し続けるアップル、Airbnb、ウーバーなどのシリコンバレー発祥のイノベーティブな企業では、STEAM人材を求めて芸術系・デザイン系の学生の採用を増加させているといいます。

著者は日本で生まれ育った後、シリコンバレーの中核を担うスタンフォード大学で博士号を取たったことや、母校をはじめとするシリコンバレーで教育・人材育成の最前線で人材育成を中心としたNPO活動を行っていることなどの共通点を持っています。本書では、そんな著者がSTEAM人材の本質とは何か、STEAM人材がなぜ今シリコンバレーの中でもとりわけ成功を収め、イノベーティブとされている企業で重視されているのかといった疑問に対して答え、それらを育んだシリコンバレーの風土や著者自身の体験談なども交えながら解説を行っています。

本書は「21世紀型人材STEAM」「新しいヒューマニズム――人間性を大切にするという思想」「イノベーションを起こすマインドセット」「デザイン思考の本質」「シリコンバレーの教育最新レポート」「私たちがシリコンバレーから学べること」の6章で構成されています。その中で著者は、STEAM人材の共通点として、
人間性を大事にする「新しいヒューマニズムの思想科学技術とアートを融合する「イノベーターのマインドセット、そして論理よりも直感を重視する「デザイン思考の3点を挙げています。また、それらに通底する考え方は「人間重視」だと結論づけています。

社会の隅々までAIが浸透し社会の構造が激変する中、企業も生き残りを掛けて「よりイノベーティブな組織」へと変身するため躍起となっています。その実現に向け、STEAM人材に関心を抱く多くの方々にとって、本書は有益かつホットな情報を提供する一冊といえるでしょう。(南楠)

<書籍情報>
世界を変えるSTEAM人材 シリコンバレー「デザイン思考」の核心
ヤング 吉原 麻里子 / 木島 里江 著 875円 / 朝日新聞出版